季刊[はちのへ中心蔵ウェル]

南部の昔っ子

  • 2020.08.01

南部の昔っ子「縄なり長兵ヱ」 [ well vol.88]

 昔々、縄なり長兵エという縄なりの大好きな男が居だったず。長兵エは貧乏で藁がなくなると、田んぼや百姓やのげぐり(まわり)を廻って藁を 拾いあさっていだず。したすけ、村の人は蛇だの紐を投げて「ほら!縄なり長兵エ、藁だ、拾え」って馬鹿にしていたもんだず。  ある日、長兵エは長者様の藁塚(にお)造りの仕事に行ったず。長兵エの仕事は田んぼから藁を運んだり、におを組む人に藁束を渡すことだったず。藁は長者の広 […]

  • 2020.05.08

南部の昔っ子「げろげの娘っこ」 [ well vol.87]

 昔々、山奥の一軒家に、じじとばばが住んでいだったず。 ある晩のこと、この辺りでは見た事もねえきれいな娘っこが「道に迷ったすけ泊めでけろ」ってじじとばばの家さ来たずおな。  じじとばばは「困った時はお互い様だ」ってその娘っこを泊めでけだず。ところが、その娘っこはそれから何日たってもえって家がら出でいかなかったず。じじとばばは子どもがながったすけに「あね」と呼んで家さ置いたず。あねはたまげだ働き者で […]

  • 2020.02.10

南部の昔っ子「でったらぼっち」 [ well vol.86]

 昔々、大昔のことだったず。ある所にたまげだでったらだ山があったずもな。その山がら朝日が出ると、神々しくて村の人は朝日岳って呼んで、毎朝手を叩いて拝んでいだもんだず。  ところでその朝日岳には、でったらだ大ちから持ちの太郎という主が住んでいだったず。太郎は自分の山を村の人が毎朝拝んでくれることが嬉しくて、お返しに風除けの山を造ってやることにしたず。なにせ、この辺りは北東からの風が強くて、夏は寒くて […]

  • 2019.11.10

南部の昔っ子「袋に入れられた狐っこ」 [ well vol.85]

 昔々、ある山寺に和尚さんと小坊主が居だったずもな。ある日、和尚さんが里に法事があって出掛けたず。法事も無事終わって、和尚さんはご馳走の折っこを持って山の寺さ向かって山道を来たず。帰る途中には坂があって、登り切った平らな所で和尚さんはいつも一休みするのだず。法事では酒こもご馳走になっているので、つい眠ってしまう事もあるのだず。そんな時には必ずもらって来たご馳走は狐に盗られでなくなっているのだず。そ […]

  • 2019.07.10

南部の昔っ子「田螺と野老の話っこ」 [ well vol.84]

 昔々あったず。ある所に田螺と野老が居だったずもな。  ある春の天気の良い日に、田螺は外の世の中が見たいもんだと、田んぼの水の中から這い上がって、のそのそと道に出てきたず。同じ日に野老も外の世の中が見たいもんだと、畑の土の中から這い上がって、のこのこと道に出て来たず。  さて、その道は一本道だったずもな。右から来た田螺と、左から来た野老が道の真ん中でばったりと出合ったず。「野老どの、野老どの、どち […]

  • 2019.05.10

南部の昔っ子「鳥こ呑み爺」 [ well vol.83]

 昔々あったず。ある所に人の良いじ様とば様があったず。ある日。じ様は畑さそば刈に行ったず。昼間になったすけ、じ様はば様が作ってくれたにぎりまんまを食っていたずもな。  そしたら、鎌の柄に見だ事もないようなきれいなきれいな鳥こが止まっていだず。あまりにきれいな鳥こだったすけに、じ様はじっと見とれてしまったず。そして「ホイ、ホイ、おめも腹へったが?一緒にまんま食うが?」って指の先さ、まま粒つけで静かに […]