昔々あったず。ある所に人の良いじ様とば様があったず。ある日。じ様は畑さそば刈に行ったず。昼間になったすけ、じ様はば様が作ってくれたにぎりまんまを食っていたずもな。
そしたら、鎌の柄に見だ事もないようなきれいなきれいな鳥こが止まっていだず。あまりにきれいな鳥こだったすけに、じ様はじっと見とれてしまったず。そして「ホイ、ホイ、おめも腹へったが?一緒にまんま食うが?」って指の先さ、まま粒つけで静かに手を伸ばしたず。そしたら鳥こは「ちょぴん」と指先に止まって、まま粒食ったず。
次にじ様はまま粒を舌の上にのせて舌を伸ばしたず。そしたら鳥こは「ちょぴん」と舌の上にとまったず。ところが、鳥この毛がじ様の鼻をくすぐって、じ様はくしゃみが出そうになったず。「ハッハッハッ」と、息を大きく吸ったとたん、じ様は鳥こをごくんと呑んでしまったずもな。
「さぁ大変だ、めごい鳥こ、呑んでしまった。どうすべ」と、じ様は腹をなでながらせつながっていると、なんと鳥この尾っ羽がへそから出てきたず。じ様はびっくり鳥の尾っ羽を少し引っ張ってみたら、なんと「あやちょうちょう こやちょうちょう にしきさらさら こがねざくざく びびらびーのびー」と、きれいな鳥この声が腹の中から聞こえたず。さあ、じ様はたまげでしまったずもな。
早速、ば様の所へ帰ってきて、「ば様、ば様、おらぁ腹の中で鳴く鳥こ呑んでしまった。ほらほら腹がら出ている鳥この尾っ羽引っ張ってみろ」ったず。ば様はおっかなびっくり引っ張ってみると「あやちょうちょう こやちょうちょう にしきさらさら こがねざくざく びびらびーのびー」と鳴いたず。「ごくらくちょうよんた」と、ば様は喜んだず。
それからじ様は町の市さ行って、皆に聞かせることにしたず。町の人達は、腹の中で鳴く鳥がめずらしく、いっぱいいっぱい鳴かせて喜んだず。こんなことが評判になり、殿様にも呼ばれて褒美も銭こも、いっぱいもらって来たず。
さて、その晩に殿様からの褒美を広げ、ごちそうを食っている所に、隣の欲ばりば様が来たず。「おめど、なんでごちそう食ってだ?」と聞いたず。人の良いじ様とば様が畑で不思議な鳥こ呑んだ話をしたず。そしたら欲張りば様は「おらえのくされじっこも山さ行ってもらうべ」と帰って行ったず。
さて、次の日、隣のくされじっこも山さ行ったず。待てどくらせど、きれいなきれいな鳥こは飛んでこながったず。来たのは山鴉だったず。くされじっこは、無理やり鴉を摑んで口の中に押し込んでごくりと呑んだず。そしたらやっぱりくされじっこのへそがら尾っ羽が出てきたず。「さあこれで良し」と一回も鳴がせないで、くされじっこは町の市場さ行ったず。
「さぁ、腹の中の鴉の声を聞かせるぞ」と客寄せしたず。皆、聞かせろ、聞かせろと、集まってきたずもな。くされじっこ、腹の尾っ羽をひっぱり、「それ鳴け、鳴け」と腹を叩いたり腹に力を入れてうんうんうなったずとも鴉は「があ」とも鳴がなかったず。とうとう終いに、くさいばばが出てしまったず。くされじっこは殿様に呼ばれる前に町の人に馬鹿にされ、すごすご家さ帰ったず。人まねすれば大水食らうとはこの事だず。どっとはれ