季刊[はちのへ中心蔵ウェル]

食育エッセイ41「食から元気なからだと豊かな心を」

食育エッセイ 食から元気なからだと豊かな心を 「いらっしゃいませ!」という明るい声、調理の過程を楽しみに待つ、心地よいお店の雰囲気、お店の空間がさらに料理を美味しくする

「荷物届いたよ!ありがとう。」と妹からのメール。老いた両親にとっては、いくつになっても娘は娘。月に一度は八戸名産缶詰やお米、風邪薬を詰め込んでせっせと送り続けている父と母。その妹への荷物の中身で、秋から春にかけて欠かすことのできないものはりんご。妹の元気の素は、なんといってもりんごらしい。

 確かにりんごは「一日一個のりんごは医者いらず」の言葉通り、効果効能ばっちりの果物であることは間違いありませんが、妹の場合、生で食べるのではなく、旬の秋のりんごであろうと、旬も終わりかけの春先のりんごであろうと、必ず煮て食べるのが元気の素とか。今回の荷物の中にも、りんごを詰め込み、ウイルスに打ち勝ってほしいと願いを込めて荷造りをしていた両親。
 元気の素は人それぞれ。好きな食べ物とはちょっと違って、これを食べれば元気みなぎる元気の素。
 父の場合は日本酒。風邪をひいても、必ず一口飲んでいる姿を見ると怒る気にもなれず、元気の素なら仕方がないと黙認中。
 母はお肉。八十歳を過ぎてから急に肉、肉と言い出して、量は少しですが、毎日食卓にはお肉料理が一品。お肉を食べると暗示をかけられたように明るく元気になるので、元気の素に感謝しています。

 その母も楽しみにしている外食ができない日々が長く続いており、出かけたくても出かけることができないので、先日は「おいしいお肉を食べたい!」という母のリクエストにより馴染みのお店で焼いていただき、テイクアウトして晩御飯に。
 「食べやすいように、少し小さく切っておきましたよ。ご両親が召し上がるのでしょうから、少し焼きも強くしました。」というシェフの優しい言葉に感謝しながら、「やわらかくて、美味しいね。」と食べ始めたのですが、なんかちょっと違う…。
 美味しいことは間違いないのですが、なんだかちょっと違う。何が違うのかしら…。
 目の前にあるお料理は、お店のものと全く同じなのですが、「いらっしゃいませ!」というお店の皆さんの明るい声が聞こえず、真剣な眼差しでお肉を焼くシェフの横顔が見えないし、心地よいお店の雰囲気がないし…。
 ああ、やっぱりこのお料理はお店で食べたい!となんだかちょっと違う、その違いに気付いたジュンコ先生。当たり前が当たり前でなくなった今の生活の中で、ジュンコ先生の元気の素は、ウエルと共にあることを実感した出来事でした。

さあ、5月。ジュンコ先生が大好きな5月。皆さんの元気の素はなんですか?
健康な身体を、健康な心を、ウエルと共に! さあ、力強く!

– 書き手- 千葉幼稚園 園長 岡本 潤子