季刊[はちのへ中心蔵ウェル]

食育エッセイ43「食から元気なからだと豊かな心を」

食育エッセイ 食から元気なからだと豊かな心を 「手」を動かして「心」を動かし、人が人になっていく。「手」を動かすことは文化でもあるのだと。

 職業柄、人にはあまり大きな声では言えないことですが、三ヶ月に一度、いや
二か月に一度ぐらい「明日は家事を
さぼります!」と宣言することがあり、夕食は出来合いのお惣菜や、馴染みの料理屋さんに注文して買いに行くことがあります。
 家族に向かって「さぼります宣言」をし、手を抜いている私。その夜は、ルンルン美味しいお料理をいただくことになり満たされるのですが、その一方で手を抜いた分、次の日からまた手をかけて食事作りに精を出そうと復活するジュンコ先生。

 毎日毎日手を動かし、食事の準備をしている私たち。どんな便利な時代となっても手を動かしてお料理することはなくならないとは思いますが、現代社会を見ていると、もしかしたら手を動かさなくても料理が出来上がってしまう時代がくるかもしれない…。合理化することが何よりも優先され、一つ一つの手間を省こうとし、効率を求める傾向のある今、「手」を動かすことで「心」を動かし生きることの素敵さを大事にしたいと、最近「手」と「心」について真面目に考えることが多いジュンコ先生。

 自分自身のことを振り返ってみても、台所での最初のお手伝いは祖母から教わったお米を研ぐことで、お米とお米がすり合うギュッギュッという手の感触と共に、炊きあがるまでの匂いが記憶から沸き上がってきます。
 また、高校から羽仁もと子が創設した自由学園というユニークな学校に通った私は、料理の時間には600人分の昼食を作ることが勉強で、リーダー当番が回ってくると、クラスの皆にわかるように、事前に作り方を大きな模造紙に書くところから始め、書くことによって材料や分量、そして手順を頭に入れ準備が始まったことを思い出します。

 どんな時でも手を動かすことで、目の前のことが自分事となり、手を動かすことで、技術が身に付き、心が動き美しい仕事になっていく…。
 自分自身の手を動かすことは面倒だったり、疲れたり、時にはやりたくなかったり!と心揺れるのですが、「手」を動かして「心」を動かし、人が人になっていくのだと思われてなりません。「手」を動かすことは文化でもあるのだと。

木々が緑色から赤や黄色に変化していき、そのグラデーションが本当に美しい季節、そして実りの秋の美味しい季節がやってきました!
 ウエルの向こう側に見える料理人の「手」と「心」に思いを寄せて。「明日はさぼります!」と、美味しい秋を堪能したいジュンコ先生です。

– 書き手- 千葉幼稚園 園長 岡本 潤子