季刊[はちのへ中心蔵ウェル]

食育エッセイ37「食から元気なからだと豊かな心を」

時代が昭和、平成と過ぎ行き、いよいよ新たな時代へ。皆さんがこのウエルをお読みになっている頃には新しい年号が示され、過ぎ去ってゆく時代に思いを馳せながらも、期待を感じる春になっているのだと。
その中で昭和から平成という時代を築き上げてきたヒーローたちも、様々な形で終止符を打つ場面を目にしてきました。そんなことを考えていた時に偶然目にしたイチロー選手の引退の場面は、熱狂的なファンではない私も、日本人としての誇りを感じながら涙と共に感動した時間となりました。

中でも引退会見で奥様への感謝の気持ちを「おにぎり」に重ねて話された場面が心に染み入りました。「僕はアメリカで3089本のヒットを打ったわけですけど、ゲーム前にホームの時は妻が握ってくれたおにぎりを球場に持って行って食べるんですけど、その数が2800ぐらいだったんですよ。そこは3000個握らせてあげたかったですよね。」
奥様への愛と感謝、それをおにぎりを握ってくれたことへ重ねたイチロー選手。イチロー選手らしいユーモアに富んだこの言葉に、時代が過ぎ行こうとも忘れてはならない何かを感じさせられたのは、私だけではなかったと思うのです。

お当作りもまさに愛の結晶。当園には週一度のお弁当日がありますが、保護者の方には目には見えない愛をお弁当という箱の中に詰め込んでほしいと、それも子どもを育てる期間の中で大事にしてほしいと願い続けています。どんなに忙しくても、どんなに大変でも、もちろんお惣菜を買ってきてお弁当箱に詰め込んだとしても、そこに手間をかけることを大事にしたいと。
衣食住の中で、最も手間がかかるのが食。献立を考え、材料を買いに出かけ、下ごしらえをして、切ったり焼いたりして出来上がっても、食べるのには数十分しかかかりません。それでも毎日毎日繰り返して人が育っていきます。
食べないでいては、身体ばかりでなく心さえも育たない。よい人に育つために必要なことは、この「手間をかける」ことしかないように思います。これまでの時代の中で、日本人は手間を惜しまずに生きてきたので、今という時代があるようにも思います。新しい時代こそ忘れないでいたい…。

理場の中からは見えないお客様の笑顔のために、手間をかけて作ってくださるウエルのお店の皆さん~!
ウエルの読者は皆さんの思いと技をちゃんと感じていますよ~。料理屋さんの愛を感じながら、ポカポカ陽気に誘われて、みんなで食を楽しもう!ジュンコ先生もいざ横丁へ!

– 書き手- 千葉幼稚園 園長 岡本 潤子